世界でも類を見ない化粧研究で博士号取得。国を超えて活躍する化粧心理学者

Name: 平松 隆円

Age: 34

Company: スアンスナンタ・ラチャパット大学

Post: 専任講師

College: 佛教大学

Language: 日本語、英語

世界でも類を見ない化粧研究で博士号取得。国を超えて活躍する化粧心理学者

大学教員、化粧心理学者。 1980年、滋賀県生まれ。2003年佛教大学卒業。
2008年同大学院教育学研究科博士後期課程修了、世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。
専門は、化粧心理学や化粧文化論など。国際日本文化研究センター、京都大学、チュラロンコーン大学などを経て、現在はスアンスナンタ・ラチャパット大学専任講師を務める。
日本と往復しながら、大学の講義のみならず、テレビ、雑誌、講演会などの仕事をおこなう。
主著に『化粧にみる日本文化』『黒髪と美女の日本史』(ともに水曜社)、『邪推するよそおい』(繊研新聞社)。
Facebook(https://www.facebook.com/Dr.RyuenHiramatsu)

タイに来たきっかけを教えてください。

2012年の8月末にチュラロンコーン大学に勤務していた友人からオファーがあったのが最初です。タイにはそれまで、旅行ですら一度も行ったことがなく、海外で働くということもあまり考えていませんでした。しかし、友人の熱心な誘いもあり、2013年5月に初めてタイに来ました。

 

タイに来てからもう丸2年働いていますが、何か気づいたことはありますか

当然ながら日系企業が多いこと、そして日本語を学び日系企業で働きたいというタイ人は多いですよね。ですがその一方で、そういった人材を育てることが難しいという問題がタイにはあることに気づきました。
たとえば、日本語を教授する研究者の不足。日本人だったらネイティブなので、だれでも教えることができ、簡単に大学の先生になれると考える方もいるかもしれません。ですが、大学という高等教育機関では、語学学校以上のことが期待されます。ですので、大学院で日本語を専門に研究した経歴(博士号の取得)が必要なのですが、残念ながら、そういう研究者はタイでは非常に少ないのです。日本のアカデミズムをグローバルな視点でみた場合、ここに一つの問題点があると感じています。

 

その問題点とはどういったものですか

簡単にいうと、“マッチングが上手くいっていない”ということです。今の日本では、文系学部の危機や博士取得者の就職難が話題になっています。実際、博士号を取得しても、非常勤講師の仕事すらみつからないという文系研究者は少なくありません。ですが、グローバルにみれば、日本語や日本文学など広い意味で日本研究を専攻とする学科をもつ大学は世界中にあり、そういった大学ではつねに気鋭の日本人研究者を探しています。ですので、若手研究者は国内だけではなく、海外にも活躍の場を求めてもいいのではないかと感じています。

 

ほかには何か感じていることはありますか

もともと、チュラロンコーン大学には大学院生の研究指導を担当していました。学部にもよりますが、じつはタイの大学の特徴として大学卒業時に“卒業論文”を学生に課さない大学がほとんどです。それだけではなく、単位認定試験でレポートを書くということもほとんどありません。ですので、チュラロンコーン大学でも、大学院に入ってはじめて文章を書くという院生が大半でした。なぜ、レポートを書く経験がないのかといえば、理由はさまざまです。レポートという客観的に評価が下せないものを試験にすると不公平が生じるということや、ヒエラルキーが確固たるタイ社会において、先行する研究をクリティカルにみることが難しいということが影響しているかもしれません。ですが、こういった姿勢が身についていないことは、大学院における研究だけではなく、ビジネスの創造すら難しくさせています。例えば、起業したいというタイ人は多くいます。ですが彼らになにをしたいかと尋ねれば、たいていはマッサージ店やカフェ、ネットショップを開きたいというでしょう。オリジナルなビジネスモデルでスタートアップしようというタイ人は、多くはないんです。

 

現在はどういった活動をされていますか

チュラロンコーン大学からスアンスナンタ・ラチャパット大学に移った理由が、じつは今話したような問題に気づいたからなんです。タイの東大とよばれるチュラロンコーン大学であれば、教員になりたいという研究者はたくさんいます。ですが、中堅の旧師範学校であるスアンスナンタ・ラチャパット大学では、残念ながら専門的な指導ができる研究者が不足していました。
また、チュラロンコーン大学に通えるような学生たちは、親が会社経営者だったりすることも多く、海外に行ったりと、多様な機会に恵まれています。ですが、スアンスナンタ・ラチャパット大学の学生は、真逆に苦学生が多いんです。だからこそ、少ない経験のなかでも本当に日系企業に必要とされるような人材を、スアンスナンタ・ラチャパット大学で育成したいと挑戦しています。
また、化粧心理学という化粧を対象とする研究者として、ときには国内外の化粧品製造企業からの相談にのったりしています。
ほかには、バンコクのレストラン情報が載っているフリーペーパー『バンめし』で、オトコの駐在生活お悩み相談というページで人生相談(www.bangmeshi.com/category/chuzai-life/)を担当したり、フリーペーパー『DACO』で日本人男性とタイ人女性をテーマに、環境学や経営学、人類学の研究者である友人たちとコラム(www.daco.co.th/series/danjo/)を連載したりしています。
こういったコラムを通じて、旅行者や駐在員という立場では知り得ないタイを理解してもらえたらと願っています。

 

今後のビジョンを教えてください

私は大学教員なので、駐在員ではありません。ですが、だからこそ駐在員としての生活ではみえてこないこともみえてくるので、駐在員では気づかない本当のタイを、情報発信していきたいとおもっています。
また、以前に勤務していた京都大学ではベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)という部署に所属し、次世代産業の芽となる研究開発とともに起業家精神に富んだ人材育成を担当していました。私自身もビジネスプランで、京都文化ベンチャーコンペティション日本経済新聞社賞を受賞しています。
当時、VBLでは京都の“竹”を有効活用できないかと考え、試行錯誤の結果、クルマのボディを竹で編むことにたどりつき、“Bangoo”と名付けた竹ボディの電気自動車を開発しました。残念ながら竹ボディでは商品化までは出来ませんでしたが、このプロジェクトがもととなって、院生たちが“Green Road Motors”という電気自動車会社を起業しました。この会社は、今では総額約17億円の第三者割当増資を実施するまでに成長し、トミーカイラZZという電気自動車を製造販売しています。
こういった大学院生のスタートアップ支援の経験を生かして、タイでも学生や大学院生の起業に協力していきたいとおもっています。もちろん、タイに進出しようという日系企業の役にも立ちたいなと。いまだに、タイに進出する企業や個人の多くは、日本人をターゲットにした不動産業や飲食店、もしくはウェブに関する業種が多いですよね。ですが、これからは、飲食店やモノを売るビジネスではなく、サービスやシステムを売るビジネス、文化を創るビジネスにこそチャンスがあると考えています。
あまり大きな声ではいえませんが、タイ人の生活を変えるビジネスアイデアや、駐在員向けではなく日本を引き払ったロングステイの日本人をターゲットにしたビジネスアイデアをもっています。
大学教員なので、自分では起業できないので、機会があればどなたかにご提案したいですね。
今年はタイ3年目になります。これまでは、タイ人の人材育成に大学での時間の大半を費やしてきましたが、そろそろ自分が研究している化粧について、日本とタイをはじめとする東南アジアとを比較して研究していこうと思っています。

 

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